東京高等裁判所 昭和29年(う)2033号 判決
被告人 斎藤四郎 外
〔抄 録〕
論旨第一点について。
所論は原判決には事実の誤認があり、また判決の理由にくいちがいがあると主張する。そこで原判決を検討すると、原判決はその第二の傷害事実の摘示において、被告人等が原判示高橋利夫の左胸部に全治するまで約四週間を要する打撲傷及び同人の頭部及び顔面に全治するまでに数日間を要する打撲傷を負わしめたと判示しながら、被告人等が右高橋利夫に対して加えた暴行の態様の中に、同人の左胸部を殴打、足蹴りなどの暴行をした旨を明示していないことはまことに所論のとおりであるが、被告人等の暴行の態様に関して原判決の判示するところを摘録すると(前略)「被告人羽石は、……路上に高橋を押倒した上、拳を以て同人の頭部を殴打し」、(中略)「被告人斎藤は、高橋の頭部顔面等を殴打し」(中略)「被告人山田は拳を以て高橋の頭部、顔面等を殴打し」(中略)「被告人日高は拳を以て高橋の顔面を殴打し」(中略)「被告人斎藤及び同山田は、相次いで高橋と格闘し、その際同人の頭部、顔面その他を拳で殴打し、或は足蹴りし」たとあつて、被告人等が高橋利夫に加えた暴行のうちには、同人の左胸部に対する暴行も含まれている趣旨であるとみられないことはないから、原判決には所論のような理由のくいちがいはないものといわねばならない。而して原判決挙示の証拠によれば原判決認定の暴行ならびに傷害の各事実を肯認するに十分であつて、被告人斎藤の原判示住釜康司に対する暴行が犯罪になるのは勿論、被告人等の原判示高橋利夫に対する暴行は到底正当防衛であるとは認められないから、それに因つて生じた傷害の結果につき、被告人等に刑事責任の存することは明白である。記録を精査し、かつ当裁判所で行つた証拠調の結果によつても、原判決には所論のような事実誤認は存しない。論旨は理由がない。